薔薇鳥/ふるる
 
 少女は生まれつき目が見えなかった。そのかわりに耳がとてもよく、例えば村中の猫たちの鳴き声を聞き分けることもできた。

毎年春先になると村には薔薇鳥がやって来たといううわさが飛び交い、若者たちはそれを捕まえるのにやっきになった。想い人に愛を告白する時、薔薇鳥の羽根をその証とすることが、この村では古くからの慣わしだったから。

薔薇鳥の羽根は春の夕暮れと同じ色で、なめらかで美しかった。美しい物を愛する少女たちはそれを何よりも欲しがった。しかし薔薇鳥は単独で飛ぶ鳥で、どこから来てどこへ行くのか誰も知らなかった。
村の若者たちは目の見えない少女に、薔薇鳥の居場所をたずねた。少女の耳ならば、鳥の
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  グループ"短いおはなし"
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