薔薇鳥/ふるる
 
鳥の羽音を聴く事ができたから。少女は羽音のした方、たまに聴く鳴き声がした方を指差して、若者たちにがんばって、と声をかけた。

少女に薔薇鳥の羽根を持ってこようとする若者はいなかったが、別段気にならなかった。歩きなれた道を歩けば、小川の涼やかな音色がし、木々の葉が風と戯れ、季節ごとの鳥が歌い、自分の足音さえもその合奏に加わる。春になれば様々な香りが鼻をくすぐるし、夏には虫たちが競って歌い、秋には落ち葉が囁き、冬には雪が静寂という音楽を届けた。少女には、それがあれば充分だった。

ある日、ひとりの若者が少女を訪ねた。若者は薔薇鳥のことを聞くわけでもなく、ただ少しだけおしゃべりをして、去っていっ
[次のページ]
  グループ"短いおはなし"
   Point(6)