薔薇鳥/ふるる
いった。それからは時々現れては、いい匂いの石をくれたり、よその国の楽器を奏でてみせてくれたりした。
少女は若者の訪れを楽しみにしていたが、それ以上を望むことはなかった。望んでも手に入らないものは沢山あるのだと、よく知っていたから。
ある暖かな春の夕暮れに、若者はまたやって来た。そして鳥かごを少女に手渡した。その鳴き声を聞いて、はっとして少女は言った。
「これは、薔薇鳥ね?あなたは薔薇鳥を捕まえたの?」
「そう。」と若者は頷いた。
「君にあげる。」
「どうして?薔薇鳥は好きな人にあげるものよ。」
とまどいながら、少女は光を宿さない瞳を若者の方へ向けた。
「僕も君を愛しているから。とても深く。」
少女はさらにとまどう。
「僕も?私があなたを愛していると、いつ言ったことがあって?」
若者は少女の耳に唇を寄せて、そっと囁いた。
「僕の名は、孤独という。」
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