風のオマージュ その8/みつべえ
 
とんど学生や若い社会人だった。講義が終わった直後、なかの一人が突然立ち上って石原吉郎に質問をぶつけた。その言葉はもちろん正確には覚えていないが多分このようなことを言ったのだ。
「私は昭和●●年生まれですが、私たちの世代は詩のテーマになる共通の体験がないと思うのです。たとえば戦争や、それによる石原さんの場合のようなシベリア体験、あるいは六〇年安保闘争のように時代と真向かう仕方で詩を書くのはもう不可能だと思うのです。いったい私たちはこれから何を書けばいいのでしょうか」
 この発言を気にとめたのは、私も偶然昭和●●年生まれであり、なすべきことのない時代の予感とみずからの未熟さに日々苛まれていたからで
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