風のオマージュ その10/みつべえ
 
る。書物は開くまでは死んでいる、といったのは寺山修司だが、そうやって奇跡的に一人の読者があらわれるまで、哀しいほど謙虚に大多数の詩集は死んでいるのだ。
 
 一篇の詩との出会いとその摂取は、読者(私)の個人的な事情を別にしては語れないものだと私は思う。極言すれば、ひとつの詩、一冊の詩集について語ることは自分史を語ることにひとしいのだ。優生学的に「優れた詩」だけを歴史の表舞台にノミネートするアカデミックな方法ではなく、私以外、世界中の誰一人読むことのない作品、私だけが友人であるような詩集があってもいいのではないか。このマイナーな詩人の本をときどき開いて蘇生させている読者は、宇宙開闢以来、私だけだ
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