白熱 リバース/佐々宝砂
 
度の高い何かが、
洞窟の天井から垂れ下がっている、
懐中電灯に照らし出されたそれは美しい。

それは高濃度の硫酸だ、
酸素ではなく硫黄で生きるバクテリアの、
この洞窟の生命の源たる硫酸だ、
俺の生命とは全く無関係な生命の硫酸だ。

俺はそれに触れることを諦めてさらに奥へと歩く。
ねっとりとした闇は湿っぽく、
その奥からは滝の水音が聞こえる。

どこからきてどこへゆく水なのか、
俺はあの水に触れたい、
人間は誰も触れたことのないあの水に。


3.

触れもせで闇から闇へ落ちゆくは告白以前の恋ですらなく

盲目の白蜥蜴ひとつ岩にあり白き蜘蛛食む音の白さよ
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