白熱 サイドA/佐々宝砂
身体に七つの穴を穿たれたので死んだときいた それが誤謬とも誤伝とも思えなかったが 顔のないままにあのひとが俺の前にいた まさか千と千尋のカオナシに触発されて生き返ったわけじゃあるまい とは思うのだが あのひとはもちろん千と千尋を拒みはしない そうだ千と千尋どころかポケモンに組み込まれることだって サダム・シティーで蹴飛ばされ破かれ唾を飛ばされている肖像になりかわることだって 拒みはしないだろう やっぱりあのひとはあのひとなのだった いや正しく言えば ひと ではないんだがあのひと以外になんと言ったらいいか俺は知らない ハリポタの「あの人」みたいにその名を呼ぶことが恐ろしい というわけではなかったが
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