白熱 リバース/佐々宝砂
1.
洞窟は亜硫酸ガスに満ちている。
酸素濃度計は警告の悲鳴をあげ続け、
俺のマスクは目詰まりしている。
俺が生きているのはどうやら奇跡的なこと。
俺を拒み人間を拒む洞窟世界で、
人間を知らぬ蜘蛛が繊細なタピスリーを織る。
まだ名のない蜘蛛だ、
人間の知らぬものに名がないのは当然のことだ。
ここで生きる資格のない俺の視覚、
暗黒では意味のない視覚、
色彩を持たぬはずのものに、
色彩を見ようとする俺の視覚。
蜘蛛よ!俺に毒を与えろ、
俺は酸素不足では死なないようなのだ。
2.
俺の鼻は奇妙に酸っぱい鋭い匂いをとらえる。
鼻水のように粘度の
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