遡航/木屋 亞万
 
石ころ転がる山道の上
船を担いで登りゆく男前
船頭が多くいた訳ではない
ただ山を登るべき船だった

夏はいつでも暑いものだが
太陽弱まる黄昏のなか
通り雨の走り去るひと時が
大地を労り、川を潤していた

最近は雨が走らなくなり
川の源、最初の一滴が消えて
山村を支えていた生命線が
ぷつりと失われてしまった

新たな漁場を求め
海へ漕ぎ出した船の上で
船頭はいがみ合い
誰かが悪いのではない
お前が悪いのだと吐き捨て
みなが船を降りてしまった

助けられるだけの人たちに
成り下がっていく自分たちが
堪らなく嫌だったのだけれど
彼らの手には生産性のかけら
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