生きるを切り取る/木屋 亞万
 
人に
届けることの難しさ

鉛筆とキャンバスを、
一眼レフカメラを、
ボールペンと原稿用紙を
持って構想を探し歩いた
まだ青かった頃の苦しみ
自分の感性が弱く、
信じるのが照れ臭かった

それなのに今
あきらめと開き直りに
深く浸るようになって
癒着していた心の膜が
あっさりとほぐれた
きっかけは桃色の写真

帰り道、雨上がりの夜道
昼間は雨と曇り空の
トーンに合わせ
鬱々としていた町が
きらきらと緊張感を
取り戻している

藍色の夜空と灰色の雲が
斑に張り詰めて、月が
白く、雲を押し開き
夜空に穴を開ける
張り出したビルや屋根や
隙間だらけの樹木
橙の街灯、人の光る窓
水溜まりに散る銀粉

こんなにも立体的で、
洗練された世界に
私は住んでいたのかと
今更ながらに思う
きっかけは一枚の
写真だった、
この詩よ
誰かのきっかけに、なれ
   グループ"象徴は雨"
   Point(2)