連作「歌う川」より その2/岡部淳太郎
 
れている

そんな
川べりの一日である

祈る人は
その死体の身元を思って
悲しんだりなどしなかった
それどころか
川の流れに乗って
上流から下流へ
そして遂には海へと
吐き出されるだろうその死体に
うらやみさえ感じたのだった
俺も
流れに抱かれたい
血の色の
空の下で

そんな
川べりの一日である

そんな
あらゆる日々の中の特定された一日
川を
死んだ人間が流れてゆく
川を
生きた魚が流れてゆく
やがて
死体は祈る人を追い越して
その視界から消えた
彼はふところへと
帰っていったのだ
俺も
後を追わなければならぬ
祈る人のそ
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