連作「歌う川」より その2/岡部淳太郎
 
のそんな思いは
無意識のうちにもれる囁きとなって
そこら中の空気に溶けて
無数の声となった
そんな
日々の中の特定の一日
今日も
川は流れる



橋の暗黒

今日も
川は流れる
川辺の石を枕にして眠った一夜から
目醒めると
世界は相変らず狂乱の巷 である
そして川が
世界の動向に無関心なのも
変らない
目醒めはいつも不快である
朝が来る度 祈る人は
暗黒を欲した

今日も
祈る人は歩く
世界の変らぬ狂乱を背に
昨日と変らぬ足どりで歩いてゆくと
橋がある
太陽はもう中天
人類は橋を渡る
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