連作「歌う川」より その2/岡部淳太郎
 
見つけた、川について書かれた書物からのほんの抜粋である。



川――それは流れるものであり、その流れは上流から下流に向かって不可逆のものである。

川――それは多量の水分の果てしない移動であり、それらの水は宇宙の法則によって生かされ、移動させられている。

川――心あるものは胸に留めよ、それが己のいのちそのものであることを。この流れゆくいのちの上に橋を架けることは許される。他人のいのちの水飛沫に衣服を濡らされずにその上を渡ることは、誰にも備わった当然の権利である。また、その中に深く入りこみ、全身ずぶ濡れになって、いのちからの贈り物を受け取ることも許される。全てのいのちは万人にと
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