連作「歌う川」より その2/岡部淳太郎
 
  会えるのは、まだまだ当分先のことになりそ
  うだ。その間に、死が何度俺を連れ去るのだ
  ろうか。だが、それでも俺は何度でも生まれ
  変り、待ちつづけるだろう。相変らず、この
  橋の下で。
橋の下で
輪廻を繰り返す男が眼の前にいる
これこそまさに
魔物にふさわしい
祈る人は驚嘆の眼で
男を見た
――俺は待っている方の人間だが、お前さんは俺
  の見たところ、待つよりは自ら行く方の人間
  だ。行くがいい、自分の道を。だが、時には
  休息も必要だろう。今夜お前さんがどこかで
  休みたいのなら、この先に廃屋がある。そこ
  に行って休むといい。
祈る人は
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