連作「歌う川」より その4/岡部淳太郎
旅
それはいつの間にか始まっている
始まってしまったからには
後戻りなど出来はしない
君は歩く
歌を歌いながら
君は歩く
息を 心臓を 弾ませて
君は歩く
自らを鼓舞するため
自らを慰めるため
歌を歌いながら
君は歩きつづける
そのようにして
旅は始まり
旅はつづく
*
(針のない時計が)
(見つめている)
(亡命者はどこか遠くで)
(川の流れる音を聴く)
*
旅はつづく
人がみんなの前から姿を消すのは
別に苦しかったからではなく
別に逃げ出したかったわけでもなく
ただ何となく
旅に出てみたかった
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