連作「歌う川」より その4/岡部淳太郎
小さな環が
いくつも集まり
もうひと回り大きな
環をつくりその環がまた
もうひと回り大きな環を生む
そのようにして宇宙は無数の環の
生命の揺籠であることを祈る人は知る
四
「彼」は普段は際限なく眠りこけていて
それは宇宙のまん中の「彼」の
寝室の中であって
そんな「彼」が目を醒ますのは
宇宙に散らばる数多の惑星の
その上に住む幾多の宇宙人の
そのうちの誰かが
何の欲望もなく
何の策略もなく
空に向かって明らかな祈りを
吐き出した時に限られている
地球人という名のまたもうひとりの
宇宙人が
真摯に祈ったことが
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