【petit企画の館】/蝶としゃぼん玉[320]
2017 01/11 21:24
ハァモニィベル

長庚さん エフェルと自由の女神について 有難う御座いました。
蛾兆さん ラスコーの壁画についての追記ほか、有難う御座いました。

さて、----------------------------
ここでは、いま、テーマを〈歴史〉ということにして、
とくに、ジャンルを問わない作品の投稿と、気軽な座談を
行っています。

歴史(個人史も含めて)に絡んだ話なら何でもOKです。


 また、作品の紹介もお待ちしています。

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★〈歴史〉に絡んだ詩ということで、私からたとえば、

安西均 作 「実朝」 という作品を紹介してみます。

 「実朝」

その目は煙らない
その目は寂しい沖にとどく
遥かなる実存の小島へ
・・・・・・

と実朝の「目」で始まるこの詩は、
さらに、

その目はズームレンズのように見る
その目は鹹(にが)い永劫が
しなやかにうねり
割れ
砕け
裂け
散ってしまうところまで細かく見る

と、続いて

その目はいつも涙に磨かれている
その目はなんでも見えすぎるために憂愁の光がともる

とやはり「その目」をみつめ続け
そして、ラスト

だから その目は雪の階段にひそむ暗殺者の
後ろ手に隠した白刃まで見ていなければならなかった。

で終わる詩です。

「実朝」というタイトルを、見事に昇華した作品で、
史実を使った部分が浮いていないどころか要になっているのが
さすがです。



建保7年(1219年)1月27日、雪が二尺ほど積ったその日、
参拝した鶴ヶ岡八幡宮で、甥の公暁にって暗殺された
鎌倉幕府第四代将軍、源実朝は、そのとき28歳であった。

政治家というより文人肌であった実朝の
詠んだ歌、

   大海の磯もとどろに寄する波
     破れて砕けて裂けて散るかも

これが、先の詩「実朝」のモチーフの一つになっているのは
ご存知の通りです。



安西均(1918―94)の詩には、他に、

 炎昼記

死体
これは自動車運送事業運輸規程第二十八条十一
項に明記された物件である。夏も深まったある
昼さがりのこと私は一枚の汗まみれな古着のご
とく吊り革に垂れながらバスに揺られていた。
・・・〔略〕・・・
げんに今ここに並んでいる乗客たちの素知
らぬ顔こそタブーを冒し合っている証拠ではな
かろうか。彼らはめいめい見えざる死体を擁し
ているのではないか。それでなくてなぜあのよ
うに疲れたり上気したり美しく化粧して街に出
かけることがあろう。生きている者の世では誰
もが何ひとつ出かけた先の街で確実に目的や要
件や満足を得たためしはないのである。その不
安のために人びとは秘かに見知らぬ者の死体を
持ち運ぶのである。
・・・

というやはり退屈させない作品が、あります。




(みなさまも、何か良い作品があったら
ご紹介よろしくお願いします)

また、挑戦してみた作品、実験してみた作品など
思いついたら吉日ということで、
ぜひ、ご遠慮なく、記事に載せて頂きたいと
思います。

本テーマ内のプチ企画として、

 (歴史ぷち企画)

を投げていただくのも、大歓迎です。

(ではまた)
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