2007 03/13 12:36
渦巻二三五
出産のために里帰りしていた天陣の娘が博覧会を見物に行って急に産気づいた。
家の者が大急ぎで駆けつけたが連れ帰ることもままならず、その場に天幕を張って産ませることになった。
生まれたのは双子の兎だった。死産だった。
天陣の家ではすでに葬儀の支度が整っていた。
組合長もすでに到着していた。
使者の行列がやってきた。
最後尾に婿がうなだれて付いてきていた。
双子の兎は立派な棺に入れられ、その棺には錦の覆いがしてあった。
儀式にのっとり、これから、棺の中の子がどちらの家のものであるか問答が始まる。
身重のくせに博覧会見物などして兎の子を産んだなどど、知られてはならない。
組合長は慇懃に使者を迎えると、まず棺を覆った錦織りの説明から始めた。