「エスプレッソ、トリプルで」
さくらいちご

私の彼は詩人である

ロマンチストな男の人はステキだと思っていたけれど、
実際に詩を書く男性に出会ったのは初めてのことだ

彼はデート中に立ち寄った喫茶店でも、お茶を飲みながら
一人の世界に入り、詩のような小説のような文字のつながりを
書いている

その横で私は本を読んだり、ショッピングの計画を立てたり
しているのだけど、彼が斜め上を見て何か考えたり、たまに
ノートをとじてボールペンをいじってみたりしている姿を
見ていたら、私も何か書いてみたくなった

一週間前にプレゼントされたボールペンの書き味も試して
みたいのだ


私も時々、書く手を止めて斜め上を見上げたり、周りにいる
人たちの様子を眺めたりしてみる

特に良い言葉が浮かんでくるわけではないのだけど、私の席の
上だけ照明器具がオレンジ・青・白の3色で可愛いということに
気付いた
椅子の背もたれが鋤を逆さにしたような形でおもしろい
女性の店員さんの髪にはお揃いのキャンドルのようなお花が
ついていることも発見した


なるほど



ふと横を見ると自分の書きものに一段落ついた彼が暇を持て余し、
自分のノートに名前を書いている

ひらがなで書かれた名前の上には?1年4組″

いつから1年生になったの? 春だものね

外は満開の桜とやわらかな陽ざしでいっぱいだ


私は詩人の彼女である


自由詩 「エスプレッソ、トリプルで」 Copyright さくらいちご 2004-04-04 10:01:06
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