思い出のクリスマスベストテン
しゃしゃり
思い出のクリスマス。
第十位
二十三歳のクリスマス。
お歳暮の配送センターでアルバイトをしていた。
朝のデパートの開店時間に合わせて、
そっちの方角にみんなでお辞儀をする。
馬鹿馬鹿しいので隣の太っちょの女の子とだべってたら、
チームのリーダーに呼ばれて腹を殴られた。
(あとから知ったけど、ふたりはできていたらしい)
第九位
十一歳のクリスマス。
お金持ちの友達が、たくさんのゲームを買ってもらって、
遊びにいくと、うらやましくてたまらなくなった。
親にぼくもパックマンが欲しいと言ったら、
ちゃんとクリスマスの朝に、
四百円の人生占いゲームが置いてあった。
(ちなみに占いでは、僕の将来はスッテンテンだった)
第八位
十九歳のクリスマス。
予備校の寮で浪人していた。
僕の部屋は中庭向きの二階にあり、窓から外へ抜けられた。
その夜は、ためにためた缶ビールの空缶を、
公園のゴミ箱に捨てに行って、
公園のまえの定食屋の親父に見つかって、怒鳴られた。
(しかたがないので、一個ずつ捨てて回った)
第七位
十八歳のクリスマス。
テニス部の女の子に告白された。
色の黒い、ポニーテールの肉感的な女の子だった。
帰りを待ち伏せされた。
僕はなぜだかわからないが、馬鹿にされたような気がした。
手紙と赤い靴下をもらった。
(その赤い靴下は、十年くらい履いていた。)
第六位
三十三歳のクリスマス。
スナックのお姉ちゃんをデートに誘った。
もちろん店は稼ぎ時だから、とつぜん休んだりはできない。
それでも誘った。
僕は本気で、その子と結婚してもいいと思った。
とんでもない女だったが、それでもいいと思った。
(もちろん、誰でもわかる嘘で、僕はふられた。)
第五位
十四歳のクリスマス。
はじめて付き合った女の子。
同じ塾で、同じバスの帰りだったから、
公園に行って、なんかしゃべった。
ところが不良に見つかって、
ロケット花火で襲われて逃げた。
(次の年には、不良とおんなじことをしたけれど。)
第四位
六歳のクリスマス。
シャランシャラン、と窓のそとで音がしたので、
母さんが、窓を開けてごらん!と言った。
いもうとと窓を開けたら、サンタさんがいて、
僕の欲しかった野球盤と、
いもうとの欲しかったお人形を大きな袋から出してくれた。
(おもちゃ屋さんも大変だなあ、って思った。)
第三位
二十九歳のクリスマス。
しなければいいのに、別れ話をした。
したのかされたのか、わからないけれど、
もう終わりだって、ふたりとも知っていた。
なのにマフラーをくれた。
テレビドラマの最終回をふたりで見た。
(マフラーはすぐゴミに出してしまった。)
第二位
去年のクリスマス。
東北を旅していた。
なんで旅してたかというと、恋人がいないから。
考えてみると、
恋人と楽しく過ごしたクリスマスなんて、一度もない。
仙台のアーケードで、暴走した車がつっこんできた。
(メールをくれたあの子にもふられたし。)
第一位
今宵。
愛されたかったひとに、
愛されなかった。
でもなにもかもひとしいクリスマスだ。
みんな幸せでありますように。
なーんて嘘だけど。
(読んでくれた方、ありがとう。楽しいクリスマスを。)