玉ねぎ畑でつかまえて
大覚アキラ

昨日の夜はカレーを作って
玉ねぎをとてもたくさんみじん切りにしたから
左手が玉ねぎくさいんだ

この玉ねぎくさい左手で
きみの頬にやさしく触れてみたい

この玉ねぎくさい左手で
きみの腰をぎゅっと抱き寄せてみたい

この玉ねぎくさい指を
きみの唇にゆっくりと這わせてみたい

この玉ねぎくさい指を
きみの中にそっと挿れてみたい

生活感がないよね
なんていわれるけど
実のところ
ぼくの左手には
平凡な日常がすっかり染みこんでしまって
どんなに洗っても
玉ねぎのにおいが落ちないから

いっそふたりで
玉ねぎ畑に逃亡しようか
真っ白い毛糸玉のような玉ねぎの花が咲く
いちめんの玉ねぎ畑に隠れて
こっそりキスしよう

そしたら
そのあとでとびきりおいしいカレーを
きみだけのために作ってあげるから


自由詩 玉ねぎ畑でつかまえて Copyright 大覚アキラ 2006-12-11 12:43:56
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