秋空の落下
月夜野

     あなたの腹黒い証明を
     鏡に映して見せてください
     切り開かれた瞳孔は
     直視するのを嫌うでしょう


          冷たい夜の水底へ
          螺旋を描いて降下する
          わたしの羽音は軽やかでしょうか


     染み一つない秋空に
     体を預けて飛びました
     やさしいあなたの街角に
     見知らぬ日傘が見えたとき
     羽は動きを止めたのです

                          
          いのちに証しが要るのなら
          痛みの果てる淵の辺の
          深みに落として見せましょう
            

     薄墨の空に日は落ちて       
     いるはずのない影たちが
     地底の襞から這いのぼり
     わたしの羽を貪ります
     日傘の紅が矢のように
     わたしの瞳を貫いて――

          
          少しも惜しくはないのです
          逃げ水のような裏切りは
          こころを置き去りにするだけです                             
    
             
     盲いたわたしは羽を失くし
     もはや俯瞰することはないでしょう
     あなたの瞳の中にある
     かつてはわたしの住んだ街
     見知らぬ日傘の行く街を



          


自由詩 秋空の落下 Copyright 月夜野 2006-11-30 17:08:50
notebook Home 戻る  過去 未来