竜巻
atsuchan69

     干瓢もなく、
    胡瓜も
   ピンク色した田麩も
     高野豆腐もないままに
    風は吹き

    サラダ巻きでも、
     納豆巻きでも、
      鉄火巻きでもない
     風が
   砂塵を巻上げて昇る

寿司屋がまるごと一軒
 宙を とぶ

     のれんを潜ると、
    愛犬トトを抱いた ドロシー
     そして
      ライオンと
     案山子と
    ブリキの木こりが
     寿司をつまみ、
    いなくなったオズの魔法使いを
   ネタに日本酒を呑み交わしている

    そうじゃないと、
   僕は赤い翼のあるドラゴンを
   一匹、捕まえてきて
    云った――
   「これを巻いてくれなはれ。

  気がつくと、
   街全体がネタにされ
    ショーケースに入れられていた
  ドロシーが、
   「兜町握ってくださるかしら
    そう云った、
        「それと、あと竜巻も

            僕はドラゴンと一緒に
             竜巻の具になって
              海苔とシャリにつつまれると
             やがて簾に巻かれ
                俎板の上を
               ごろごろ廻されていた













自由詩 竜巻 Copyright atsuchan69 2006-11-23 00:06:11
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