化石の子
くあせ@ふじこ





世界がすこし傾いた音を
玄関先でブーツを脱ぐ途中
うずくまったまま聞いている


水分が喪失したまつげ
足りない
水分が足りない


私はこのまま穏やかに干からびて
玄関先の化石になろう
乾いていく音と
朽ちていく音


はるか遠い昔
雪山で死んだ人のミイラみたいに
謙虚な物質になりたい
深海魚のように
厳かになりたい



水が欲しい
涙がでない
だって化石は泣かないもの


自由詩 化石の子 Copyright くあせ@ふじこ 2006-11-10 17:54:54
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