銀の手
木立 悟


わたしは投げ出す
わたしは拾う
手は銀になってゆく


つばさ失く飛ぶ火が越えてゆく海
ただ音だけで造られた海のむこう


骨と魔術師との対話
夜に生まれ
朝に消えるバベル
こぼれ落ちる言葉の色に
飢えた耳を傾けるものは
もっと不埒な神になる


冷たく激しい
雪のない吹雪のなかに
罠のように立つ温かさの塔
わたしは拾う
もうひとつの言葉を
手に乗るだけの温かさを
人のままさまよう那由他の言葉を


歩き出せ
走り出せ
飛べ
世界は無数のもうひとつを持つ
歩き出せ
走り出せ
飛べ
つばさ失きひとりの火のように
銀の手で
銀の手で
古い季節の音たちが
折り重なる歩道から
閉じた目の先へとつづく
蒼と金の滑走路から




自由詩 銀の手 Copyright 木立 悟 2004-03-19 06:49:36
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