くものうた
青色銀河団

おまえはあれが空の梯子だと言う


あけがた
透明な寺院をさまよいながら歩いていると
喜びのひとつが小鳥になって歌ってくれました
かの鳥が木の実をついばむ記憶のなかで
短いいのちが固い核のように語られます
太古の衛星都市が
いまも海の底に深く沈むさながらに


少年の仮面をつたう
ひとすじのなみだ
うつくしいたましいは
蜜柑色した悲しい背中でありました


音のなかに
浮かびあがる音楽
ぼくはまだ産湯につかったままでいるのに
電子葡萄酒 電子葡萄酒 ボルト ボルドー ジャンプ ジャンプ
ジャンプしてボールが手にあたる高さ 聖なる高さ 山や丘の傾斜地に
身元保証人が溶けだす 正妻から生まれること 悪い知らせ きれい事ばかり言う人 川谷沢の流れが合流するところ  とくりと狭い口から液体がとくとくと出てくる 互いに隔たりがなくなり打ち解ける=融ける=溶ける
溶けて一つになる 少女 銃 首 種 スペイン産の白ぶどう酒
コバルト すべてが明るい青色の顔料に染まる!















存在する/存在しない俺



空の
匂いがたちこめるほど
夕闇は深まり
俺は鈍色に光る
ひとつの空間である

(微かな翅音はずっと止まないまま)

昨日から忘れさられた俺は
夕闇の狭い部屋に囲まれて
女の乳房を探っている
女の乳房を探っている俺と
女の乳房から探られている俺との
ちょうど中間地点には
えぐられた砂漠が横たわり

確かに存在する俺と
不確かにしか存在しない俺とが
共にざらざらとした青色に
溶けてゆく

情熱がはじめて夜明けを
打ち砕くとしても
ひびわれた渇きこそが
せつない観念の皇帝なのだ







自由詩 くものうた Copyright 青色銀河団 2006-10-17 23:41:28
notebook Home 戻る