クロスシート
たりぽん(大理 奔)

四時三十六分 
始発
どいつもこいつも
終着にむかっていきやがる

終着は、またどこかへの始発で
始発は、いつしか誰かの終着で
だれもかれも
途中で降りるのだろう

可変電圧可変周波数制御サイリスタ
低く、高く、低く、高く
回されていく交流電動機の
心音で胸がきしむ

ロングレールの継ぎ目に
時々つまずくように
音をきしませて見せると
僕が目覚めると思ったか

目覚めていた、いつでも
この窮屈で退屈な居場所で
同じ方向に流されていくだけの
昨日とか去年とかに似た風景

六時十分
終着
どいつもこいつも
改札にむかっていきやがる

取り戻せるかも知れない
景色を反対に流せば
取り戻せるかも知れない
低く、高く、回せ

プラットホームの人並みに逆らうように
回生制御ブレーキチョッパを解かれた世界が
時々つまずききしみ
分岐軌道をまたぎながら
若かった頃のように
左右に肩をゆらして

目覚めていた、いつでも
取り戻せるかも知れない
名前も呼んでみた
温もりも探してみた
仕草をまねてみた
低く、高く

心音が空にきしむ
耐えきれず、見知らぬ駅で
中途半端に改札をくぐると
やっぱりそこは見知らぬ場所で

クロスシート
探してる、
同じ方向に流れる季節を
懐かしみながら


探してる
窮屈で退屈な居場所





自由詩 クロスシート Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-09-27 23:09:03
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