遠景 Ⅱ
木立 悟




裂けた木々の
あふれ 重なる川
虹彩の無い灰紫の眼に
生はかすかにゆらいで見える
原を駆けるものの涙も
草をかきわけるものの血も


円く平たい空気の底に
砕け散り 砕け散り
星の病のように回る
主人あるじを捨てた石の羽
歌はまだ届かない


踊りながら消えてゆく民
祭の数だけ神を造り神を壊し
草の数だけ歌を放てば
生を失くした言葉の鬼さえ
空をゆく眼のなかで揺れ動く










自由詩 遠景 Ⅱ Copyright 木立 悟 2006-09-25 17:57:27
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