少しの距離
yozo

人間の一生を季節に例えられるとしたら
いや
これは何万回と昔から繰り返された
ツマラナイ屁理屈やら感傷のようなモノの延長なので
聞き流してもらっても一切構わないんだけど
人間の一生が
キミの一生が
自らを被験する所のボクの一生が
この曖昧な国の四季に例えられるとしたら
どこからスタートして
ドコに着陸をして眠り込みたいだろう
モヤモヤと始まる毎日を
あいかわらずこんなコト考えて塗り潰している





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     境 目 ?
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     境 目 。
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     何 と 何 の 境 目 ?
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     安穏 と 退屈 の 境目 。
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     冗談 と 本気 の 境目 。
   ──────────────────
     過去 と 未来 の 境目 。
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7月は睡魔と暑さのミックスで
汗でよれるノートにかぶさり
ボクの動かすペン先に寄り掛かる
理解不能な数式の脇を飾る青い軌跡は
文字と呼ぶにはおこがましい

背後からピタリと声がする
正確に言えば声よりも先に体温が
それよりも先に柔らかな気配が
ボクの意識にすり寄ってくる

防御を決め込むボクの頭を
キミは容赦なく殴打する
ボク達のコミュニケーションの展開は
大体がこーして組み立てられているから
ボクも叩かれるのは了承済みだ
昔みたいに口の中を噛むコトもない

なかなか顔をあげないボクに呆れ
漏れたインクで青く染まったボクの指を
隠された不格好な文字を暴こうと
キミはピッタリと体を重ねる

ボクは知ってる
ボクが嫌がる方がキミは喜ぶ
キミに怒られるボクをキミは随分と気に入っている
変わらない日常というヤツだ
全てがゆるやかに流れていくのだ


いつまでも抵抗を続けるボクの手に
キミの指がきつく絡まる
こんなにも手のカタチは違ってきている
同じ人間なのに面白いなと思う
長いこと一緒に大きくなってきたのに
今さらながら面白いなと見愡れる
その時

突然遠くから誰かが呼んだ
正確にはボク達の中の誰の名が呼ばれたか
判断しかねた
ボクは逃げの為にもキミの名を告げ
キミの注意をボクから逸らし
ノートの死守に成功をする

勝負ついたり
振り返って口の端で笑えば
キミは背中から離れた後で
重さと温もりもすでに無かった
勝ったと思ったのはコンマ2秒だ
ドアをするりと抜けるキミの
白いシャツが光で透けた
ボクは背中をただ見送った
ヘタクソな文字を見られなくてよかった





ところで
季節だ
季節に例えられるとしたらってヤツ
ボクは春を選ぼうと決めている
ありきたりなチョイスだが懸命で正しい選択だろう
うららかな春の優しさに迎えられ
ボクは人生をスタートしたいと思うし
きっと後々振り返った時
このひらめきに感謝をするのではないだろうか
それ程に春は始まりという全てを
慈愛の掌で受け止めてくれる
フラフラと歩きだした足跡は
光と花びらに祝福される
多少曲がりくねってはいても
あぁボクは歩いているんだ
そう実感できるんジャないか

暖かい日射しと
まだひんやりと湿る宵の闇との隙間で
未熟で脆い魂は
少しづつ成長をはじめていく
気付けば一瞬で過ぎてしまう
最初の貴重な数年を
だからボクは春の中で過ごせたらと願う
キミとボクが出会ったのも
たぶん春の出来事だった

クシャミを1つする
空気に肌がピリピリする
ボクは春を選ぼうと決めている










 境 目 ?

 境 目 。

 何 と 何 の 境 目 ?

 始 め と 終 り の 。

 春 と 夏 の 。

 キ ミ と ボ ク の 。


自由詩 少しの距離 Copyright yozo 2004-03-09 23:41:29
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