褐色
あおば



もうひとつの太陽が
もうひとつの月が
何処かに隠してあるのだろうか
もう疲れたと言って
勤勉な太陽が
沖の向こうに沈む頃には
新しい曲に乗って
新しい太陽が
夕焼け雲に乗っかって
ずんとやってくるのかもしれない

覚悟を決めて逃げ出した

なにしろ21世紀になると
病弱の遺伝子は排除され
美しいもの強いものだけが
選択されて育てられ
麗しい種族が地に満ちるとか

もう一つの地球ができたので
遠くの宇宙の穴の中に
僕たちの太陽と月と
いまの地球をつっこんで
なにもなかったことにしてしまう

そんなことはあるわけないと
おっしゃるあなたに
もうひとつのいのちをさしあげる
黄緑の若葉の上に這い回るのは
もうひとつのあなたのいのちです
小さくて脆い身体のまわりを
物欲しげな褐色の弾丸
足長蜂が飛び回っています




作00/12/28(Thu) 00:34



自由詩 褐色 Copyright あおば 2006-09-03 02:52:44
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