面影橋
しいこ。


桜の淡桃色は その下に人の死体が埋まっているから…という
噂を子供らが集まってヒソヒソと−
うひょ〜 とか
う゛あ〜 とか
ほんとに?! とか
言いながら 震えてた

じゃあ あの橋のそばに
センセイは埋まっているかしら?
今年もきれいに咲き乱れ
桜吹雪に散らされて
花びらが ふうわり ふわり
今も何でも無かったかのように
センセイがいた 診療所の内科は
子供や年寄りや色々な人の
病気を治すために 働いています

思うより人々は
何事も無かったかのように
センセイをどこか美化して忘却を始める

ここの景色は全てを
忘れないようにと
同じ速度で揺れている

何かが少しずつ 少しずつ 変わっても

ガタゴトと音だけが変わらない
と…
ある人は恋の思い出
ある人は生活の思い出
ある人は通り過ぎの思い出

人は何かの面影を何時も背負って生きてみる



自由詩 面影橋 Copyright しいこ。 2006-08-26 17:15:06
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