夜店談話
蒸発王

6歳の頃
初めてりんご飴を買ってもらった
食べるまで
りんご飴は
ケン玉の赤玉でできている と思ってたので
甘くて柔らかいから吃驚した


7歳の頃
初めて金魚すくいに成功した
ふわふわの尾っぽの赤い金魚は
其の朱色が水面になびくので
なんだか色っぽくて
良く分からなかったけど
あまり見つめてはいけない気がして
どきどきした


8歳の頃
狙いが外れて
釣ったヨーヨーは
桃色に青い水玉で
女の子みたいだと溜息をついたら
隣りで釣った女の子が
真っ黒な地模様に縦じまの入った
カッコイイものだったから
2人で相談して
交換した
嬉しいけど
やっぱり恥ずかしかった


9歳の頃
母さんの反対をふりきって
黄色のヒヨコを一匹買った
ふわふわで可愛いそいつは
7日で死んでしまって
お墓を作って泣いた
手の中で冷たくなる
あの感覚が
しばらく手の平に残っていて
死んだ事よりも
冷たくなることに
其の重さに
切なくて泣いた


10歳の頃
屋台のおじさんが
おまけで作ってくれた飴細工は
小さな鳥の形をしていた
尻尾だけ長い鳥は
今にも割り箸を離れて
飛んでいってしまいそうで
急いで食いついた
溶ける甘さを抱えながら
甘味が肺から背中へ届くみたいで
翼が生えて
飛べる気がした

真上に輝く白鳥座まで
どこまでも
飛べる気がした




『夜店談話』






自由詩 夜店談話 Copyright 蒸発王 2006-08-06 22:08:33
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