むかしばなし
佐々宝砂
わたしがまだとてもちいさかったころ
牛舎でチャボを放し飼いにしていた
あのころもたぶん
鳥インフルエンザはあった
卵を隠すチャボがいた
牧草の陰にふたつみっつとあった
探し当てるとお小遣いをもらえた
ひよこはときどき牛に踏まれた
乳牛のひづめはあれで割合とがっているので
ひよこはあっさりとつぶれた
ケチャップ入りのオムレツみたいに
大きいチャボを潰すというと
その日はごちそうだから
うれしかった
それがメスのチャボなら
とてもうれしかった
玉道が好物だった
じゃがいもとたまねぎと煮た
あのころもきっと
鳥インフルエンザはあった
玉道→たまみち。鳥の卵巣のこと