【短歌祭参加作品】青の墓場
一代 歩
思い出に、ゆかたの君が見たいだけ箱根温泉ゆあたりに風
きっかけがどこにあるのかわからない花火轟くまでの沈黙
ぎゅっと手を握る二人は蚊帳の中 外のすべてが愛しく見える
小学生みたいなことをしたくってプール帰りにかじったアイス
夕立が来るってわたし知っていた 明らかだった 隠そうとした
ためらいもなくTシャツを脱ぎ捨てた半裸のふたりためらいもなく
「三日月が夢だったの」と同じこと去年も言った君とすいかを
確実に生きてはいない人たちが眠る墓地にて 一代 歩
これ以上きっとないからもうここで冷凍都市に保存する夏
人生を長く続けてしまっても夏の青さは青いまま逝く