【短歌祭参加作品】ゆめのなかのこいびとたち
ピッピ
夏をつれてくる妖精がいないから冷やし中華を初められない
泣きながら闇夜に響く帰り足コンクリートは夏の青み
ウェディングドレスの中で夏に埋む指の日灼けを抱いて遠くへ
もう蛇と同じくらいの長さだね夏の隣に住む君の舌
夏のあの時あたし同性も好きなんだって水風呂の中
白夜だね、指差せば昼間の陽はゆれて世界がなくなる前兆のように
逃げているのか逃げられているのか風を知らない夏のしずけさ
youのbe動詞を忘れていつまでも夏の手を離せない
太陽の周りを回る惑星のように海岸沿いはまぶしく
雲に乗ってバルブ回せばさあ、僕ら濡れれば弱る夏の奴隷
白桃を剥けばあの娘の真白いリコーダを吹く僕がうまれる
あの夏は何座、あの夏は何座ってもう戻らない星座はつづく
真夜中に老人ホームに向かうバスたましいなんかを黙って見てる
当たり前に海のある風景の中で夏の君と全裸の僕と
ピストルが二回鳴ってた、さあ行こう足跡のまだない街角へ
夜に食う夏の種を弾く爪も離れた時間知っていたんだ
祝いたい今年も夏が来たことを 直立の僕らに日光を燃やし
フィラメントは夏くはじけて夏は夢 醒めても夢はつづく、と云った
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短歌祭参加作品(ピッピ)