絵葉書坂
umineko

土砂が流れ、人が死ぬ。
山あいの村を、水があふれる。
生活をすべて、押し流していく。
ささやかなものを。

IT長者たちが、お互いの富を分配する。
早い者勝ちですよ、と
悪びれずいう。
正しいということ。

雨上がりの空は
どこかぽっかりと
私たちの暮らしとは
まるで無関係

訃報にぽつりと
10代の少年がいる
年老いた者たちの
嗚咽する声

売り抜ける人たちが
登っていく坂道と
瓦礫の下の痩せた陶器を
なぞって泣く痩せた老婆と

私は
絵葉書みたいに切り取って
こころの
窓という窓に
ふつうの呼吸も
出来ないくらいに

正しいということ。

小さな
山あいの国
絵葉書だけが美しい

ITも
豪雨も
オールスターも
ミサイルも

切り取って張り付ける

私は今
とても醜い傍観者だ

空の青さと
同じくらいに






自由詩 絵葉書坂 Copyright umineko 2006-07-22 11:14:07
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