青のために
佐々宝砂

簡素な水色のシャツが夏のお気に入りである。
短いスカートから突き出た貧弱な脚。
フラッパーの髪はもつれて乱れている。

秋は青灰色のワンピースが好きだ。
胸にラピスラズリのブローチをとめる。
癖のない長い髪は風になぶられても端正だ。

ふたりは鏡を使わず化粧する。
ルージュを互いのくちびるに塗る、
赤くはないから口紅とは呼ばない。
目元にきらめく星はみな青い。

準備ができたので、
手をつないで、
屋上に立つ。

夏と秋は冬のために死なねばならない。
そうしなければ春の到来は阻止できない。
ふたりで話し合ってそう結論した。

ふたりの髪は青い。
アニメの少女の髪のように、
非現実的なその青。


6月21日. 2001


自由詩 青のために Copyright 佐々宝砂 2006-06-21 22:17:57
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
Strange Lovers