デラウエア
藤原有絵

いつか鳥取砂丘で奪われた
気怠い熱が返ってくる感じ


デラウエアの雫が
中指からぽたりと落ちて

甘やかな記憶が
砂塵のように崩れていく
それは不思議な爽やかさで


一歩踏み出す事で
ぐんぐん体力が失われて
荒い息づかいで進んだ

靴の中が細かい砂で満たされて
諦めて両手で持ちながら
なお 進んだ


向こう側って本当にあるから
見れる限りは頑張ろうと思うんだ


左手でデラウエアをむしり取りながら
右手は記憶の残痕を探している

繋いでみても
あの抜けるような空は戻らなく

ゆるやかな余韻が
初夏の夜を満たしていく


あの正しい気怠さで
向こう側を見たいと思っている





自由詩 デラウエア Copyright 藤原有絵 2006-06-21 01:28:32
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