Love Song
佐々宝砂
ここはほんとにからっぽで
なんにもないのです
ポケットだらけの服より
空気のはいったスーツケースより
からっぽです
きれいな声音で
愛について
鳥がさえずります
もうすぐ春ですから
水色の絹布をこの世界に投げかけましょう
金泥の渦をこの時間に滴らせましょう
もうなんにもないのですから
なんにも怖くはないのですよ
ここにきてください
すべて幻で
そしてこの私を含め
すべて幻は
あなたの思うがままですが
あなた自身は幻ではないのです
あなたが世界を存在させます
二月半ばの大地にしがみつく小さなタンポポも
風に羽をふくらませる雀の群れも
あなたなしには存在しない
ええもちろんこの私を含めて