夜護
黒川排除 (oldsoup)

ヤモリが窓にはりついている その腹は白い わたしはそれを見つめながら 目の前が
急に真っ白になってしまう もがいても晴れぬ霧のなかで 人恋しさに泳いでいた視線
が骨格を発見する 継ぎ目の無い骨はセルロイドで補修されていて みんな一定の方向
へ突起しているから そちらへ向かってゆっくりと歩いていく 真横から心臓の深い鼓
動が響いてくる 波打つ血液の大半が 性器の周りを巡っていた事は後で知ることにな
る 子孫の繁栄がしかし予兆となってうごめいていたのは確かで わたしは前進の度に
それが反逆である事を嘆いていた なんとわたしは弱い事だろう 愚かで 経験が先人
の足跡を消す事も理解できずに 永遠の砂地をさまよっているのか 横切る模様は絡ん
だ内臓で あらゆる腫瘍をはらんで黒ずんでいる それが裂けて口となり問いかけるの
だ 人が理解する事の出来ない言葉で さようならと答えるわたし 背中に壁の圧力を
感じ飛び起きれば 窓にはりつくヤモリの姿は既になかった 吸盤の残したわずかな痕
跡を頭上に わたしは夜にはりついているのだ わたしの腹をまさぐる何者かを感じな
がら


自由詩 夜護 Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2003-07-25 02:27:07
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