天国
岡村明子

つきぬけるような青空だ
天国の存在も許さぬほどに

旧年度の引き継ぎが終わり
神様は後任のために天を掃除した
きっぱりと片付いた空に満足し
目を細めれば

見よ 地上には桜の煙り
赤ら顔の雲上人
ネクタイを振り回し
パンプスを脱ぎ捨て
桜色の中
ふわら ふわら

神様は地上を造ったことを激しく後悔した
これでは
どちらがパラダイスにいるのか
わからない

神様は春の陽気にうつらうつら
きらめく丸い
海ばかりの地球に
ときどき
いるかが飛び跳ねる夢を
見た


自由詩 天国 Copyright 岡村明子 2006-05-11 14:02:17
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