たいようはぼくらのてき
日雇いくん◆hiyatQ6h0c


 週末だから町外れのスナックで朝まで飲もう、と言われたのだが、恐怖を覚え、
「イヤ!」
 と叫んで、思わず逃げてきてしまった。なぜか服装が乱れるほどに走った。
 いい人だと思うのだけど、まだ心の準備が出来ていなかったの、だった。
 その足で家路に着き、パフで簡単に化粧を落としてからなんとなくテレビをつけ、一息つく。
「ああ、私ってダメだなぁ……」
 別にもう少女でもないのに、未だに男の人と恋愛に落ちる事もできない自分を、私は自嘲した。
 テレビの画面が楽しげな光景を映していた。高校生くらいの年齢だろうと思われるタレントが人気俳優とはしゃいでいるのが、今の私の心に突き刺さる。
「どうして私……」
 女性向けの恋愛本がちらばる薄暗い部屋で、画面を見るのがイヤになってスイッチを消し、寝転ぶとそのまま手をスカートの方に持っていった。
 そしてつかの間、現実から逃避する。

「ああっ……」
 つい声を出してしまう。なんだか恥ずかしくなる。
 でももう、止めたくっても止まらないんです。
 アタシって、悪い人妻、なんです……。
 夫は会社でずっと残業だし、どうしてもサビしくって、仕方がないんです。
「あっは〜ん」
 ぐりんぐりん!
 この間池袋のロマンス通りの裏道の大人のおもちゃ屋さんで買った電動コケシ太郎と花子ちゃんVer.3.1が、たまらなく、いい。
「ダメダメダメェ──!! ああっはひ〜〜ん!!」
 もう少しで、イっちゃう。
 と、突然スゴイ爆発音がした。
 ばっきゃああああん! ずっこおおおおおん!
 どうしたの?! と思ったら、いきなりネオンをピカピカ光らせたデコトラ、っていうのかな、が壁を突き破って、部屋に飛び込んできたんです……。
 
 ドンガラガッシャンガ〜ン!! バキューン!!
 驚いて振り向くと、2歳から65歳くらいに見える、品のいいオジサンがバーバリーを翻しながら怒鳴ってきたんです。
「おい! この辺にパン工場はあるか? さっさと返事しな!」
 白髪アタマでしわくちゃ顔のオジサンの、ものスゴイ剣幕に圧倒されて、私は恐る恐る、近くにある倒産寸前の噂が絶えないという掘っ立て小屋みたいなパン工場の方向を指差しました。すると、
「そうかあ! あばよ! それと、遠足の前にはウンコしとくんだぞ! 先生に付き添われて野グソはカッコ悪いからな!」
 そう言い捨てて、紳士は去っていきました。
 ブロロロロ〜!
 
 後には、壁に大きな穴が残りました。
 すぐに警察を呼んだんです。
 約30分で、ジャニ系っぽい人が点滴を担いできました。顔色が悪いみたいだけど、動きがキビキビしてる。
 どことなく変な人だな、って思ったんだけど、とにかく、事の顛末を話したんです。
 そしたら、彼ってこんな事を言うんです。
「穴なんて、塞いだらいいんじゃん?」
 彼の発したあまりの言葉に声を上げようとしたら、そんな暇もなく私の濡れたオマンコに猛り狂ったものを入れてきました。
 ズブリっと……。
「あああああああああああ〜〜ん」
 
 アタシ、つい感じてしまいました。

 で、イッてしまった。
 それからしばらくして気がつくと、アタシ、月の砂漠にいました。
 ウサギが餅をついていました。
 で、アタシも、オマンコをついてもらいました。
「あんあんあっはんイグイグイグぅ〜〜〜!」

 もう、幸せって、こんなものかしら。
 なんて、ふと思うんです。


散文(批評随筆小説等) たいようはぼくらのてき Copyright 日雇いくん◆hiyatQ6h0c 2006-05-02 01:43:17
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