創作の泉
ナイチンゲール

昔はアイディアが出てこなくて、よく悩んだものだ。
運良く出てきても自分で満足できるものではなかったり、
次の日に読み返すと思わず赤面してしまうようなものばかりで、
書きかけの作品を完成させずに破いて捨ててしまっていた。

僕は小説家になりたかった。
けれどもまともに小説を書き上げたことは数えるほどしかない。
それもすごく短い奴で。読み返すと顔から火が出そうなものばかり。

コンクールや出版賞は400字詰め原稿用紙30枚以上なんて
無茶な条件を突きつけてくる。
そんなの自分に書ける訳がなかった。

なので自分が書くのは短編小説だと割り切って書き続けた。
何十作品か作り終えた頃、ふと長編も書ける気がして
試しに書いてみたら意外とすんなりと書けた。

けれどもそれは好きなプロの作品のパロディだった。
読ませた友人にすぐに見破られて恥ずかしい思いをした。
やっぱり自分には小説家なんて無理なのだ。

せっかく短編小説なら書けるのだから
詩人にならなれるかもしれない。そう思って詩を書いた。
そして詩の世界は実に奥が深いことを知った。

言葉一文字にどれだけ複雑な想いを込められるのか。
そんな細かい作業に全身全霊を傾ける姿を見て、
ああ、これは真似できそうにないなと思った。

僕が目指しているのはもっと分かりやすくて、
手放しで読んでもブワァーっと感情が溢れてくるやつだった。
目指すものは似ていたけれど、どこか違う気がした。

けれども、僕はそこで自分が小説を書く時
いかに気を使わないでだらだらと言葉を垂れ流しにしていたのかを知り、
それは改善しようと思った。

そして今、もう一度小説を書いている。
しかも生まれて初めて出版社のコンクールに応募するために。
条件である400字詰め原稿用紙30枚以上はとっくにクリアした。

書いていて実感した。やはり日々の積み重ねが大切なんだ。
さっき使った一節は昔作ったあの作品で使ったやつだ。
この主人公の台詞は昔作ったあの作品で主張してたことだ。

次から次にアイディアが生まれてくる。
僕に小説の指導をしてくれた先生はこう言っていた。
創作の泉は出せば枯れてしまうように思えるけれど、
実は逆で、出そうとすればするだけ溢れてくるものです。
本当にその通りだと思った。



未詩・独白 創作の泉 Copyright ナイチンゲール 2006-02-11 13:22:54
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