アメリカ人になってみた
逢坂桜

いま、アメリカと日本は、狂牛病問題で、大変。

アメリカの、もしかしたら食べた人が死ぬかもしれない牛を、

日本は輸入したくない。ほしいのは、食べても絶対に死なない牛だけ。

「どうして牛だけ、そんなにイヤがるの?」

日本の米。北から南まで、日本人はお米が主食。

だけど、単位面積あたりの農薬使用量は、日本が世界一。

「そんな危険なお米、喜んで食べてるのに」

自分で食べるお米には、農薬を少なくする農家の人。

それってたぶん、あたりまえ。誰でもきっと、そうするよ。

それと、日本酒。お米と水から作る、昔からあるお酒。

嘘つきがたくさんいる。お酒を3倍に薄めて、アルコールを注ぎ足したお酒。

ずっと昔、本物が作れないから、誤魔化してまで大切に作ってきたお酒。

日本は魚も大好き。生で魚を食べてる、めずらしい国。

だけど、天然の、海で生きている魚は、少なくしてしまった。

だから養殖して、みんなで食べてる。

それはすごいこと。昔、食べ物がなかった頃、飢えて死ぬ人を減らそうと、

智恵を出し、失敗してもあきらめずに続けた人がいた。

いま。網の中で魚を育てて、魚たちが病気になったら困るから、

餌には薬を混ぜてます。ホルマリンもたくさん使ってます。

それだけが理由じゃないけど、海は死ぬ。きっと死ぬ。

「養殖のお魚、どうして切り身が多いの?

 それはね、普通は食べられない畸形の魚も、商品として売れるからだよ」

水産養殖場の人は、養殖のお魚、食べたくないんだって。

日本人は、鶏もたくさん食べてます。

ブロイラーと鶏は、ホントは違うんだけどね。

暗い工場の中で、ヒナは鶏に成長して、最初で最後の光を浴びて、

他の場所へ行きました。その後、鶏はバラバラになり、お肉に変わりました。

鶏も豚も牛も、みんな薬を食べさせられて。

「出荷てなに?

 食肉工場へ移動して、殺すんだよ。そして君の前に来てくれる」

果物や穀物、アメリカからもたくさん輸入してくれてるね。

アメリカでは使ってない薬も、たくさん使ってるの。

船で運ぶ間に、カビには気をつけないと。だから、薬を使ってる。

発がん性物質が入ってる。アメリカでは使ってないよ。

使いたくないからかな?

「ね。日本の人。どうして狂牛病だけ、そんなに問題にするの?

 貴方たちは、こんなにたくさんの怖いモノを食べているよ。

 もしかして、教えられてない?

 それとも、知りたくないから、見てないの?」

日本人の寿命が、とんでもなく延びたのは、乳幼児の死亡率が下がったから。

赤ちゃんの頃の定期健診、義務教育の頃の予防接種。

衛生面は、気を遣ってる。上下水道はほぼ完備、除菌は街中のトイレまで。





「日本人の食べているものは、危ないものばかりなの。

 だから、牛を食べてくれてもいいでしょう?」







こんなことを言われたら、なんて返せばいいんだろう。


散文(批評随筆小説等) アメリカ人になってみた Copyright 逢坂桜 2006-02-07 21:04:03
notebook Home 戻る