今日もおはようといって
umineko

通勤の途中にね。大きな川があるのだ。

もぅ海にも近くて、潮の満ち干きにあわせて、
川の水位がずいぶん変わるの。今日なんかは、なんての
もうほとんど水がなくて、はるか向こう岸まで歩いていけるのかもって
そんな風にさえ思うくらい。

それは月の引力って知ってるから、ときどき見上げるんだけど。
いないです。あたりまえか。
違う方向から引っ張ってるんだから。

強い力でさ。引き寄せられたら。
違う方向だからって、関係ないよね?

私はここにいて。
私はここにいない。
違う角度で引き寄せられて。

私は私の形をしているから、みんな私だろうって
思ってるだろうけどさ。
私は。

少しずつあきらめているよ。
枯れていく川底のように。
私は失われていく。

愛が充足とか濃密とか、そんなふうな形容は
誰が容認したんだろう。

私はただ歩いている抜け殻で、抜け殻のままで
おはよう、とかいって、いつもの売店でヨーグルトを買う。

今日、仕事が終わったらパステル画の画材を買いにいこう。
今なら何か描けるかもしれない。

私はあきらかに変わってしまった。
人が。
ときどき過去を夢見るのは。
確認したいからなのだ。
私はこのまま違う何かになっていくのだろう。


失われていく私がいとおしい。
今日もおはよう、といって。
 




自由詩 今日もおはようといって Copyright umineko 2006-01-20 12:45:53
notebook Home 戻る