地下鉄の雨
霜天

膝を折り、抱えた腕で
目を隠し
一度目の冬の質感を
花、枯れたままの鉢植に
黒い髪の揺れたあなたの日を

思い出して


ここで乗り換える
僕の靴は


 自由なさよなら
 ここで乗り換える
 入り口は、地下鉄は
 まっしろなアーチ状の使い回し


ぽつり
雨の
囁き合うひとり、ふたり
帰る列に並ぶ靴の
懐かしいと、忘れた日々
濡れた、草の匂いがする

 ここで眠りたい、とか
 揺れながらの心音で想像、して
 空の無い地下鉄で雨が降る
 空の無い地下鉄で雨が、降る
 ここで眠りたい、とか
 心から、届けて


まだ、届かない、たどり着けない
変わり続ける思考や思想
変わらない芯の温度
願いたい、こと
目隠し、一度目の冬の質感を
二度目には懐かしんで
暖かいと、言いたい


不自由なありがとう
まだ、降り止まない地下鉄の
今、ここで眠りたい


自由詩 地下鉄の雨 Copyright 霜天 2006-01-17 01:34:41
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