色恋は来たらず
北村 守通

色恋は来たらず


人々は
十戒の如く
割れて通り過ぎた


色恋は来たらず
なので
どんなメリットがあるのか知らないが
とりあえず
持っていないものなので
所持することに憧れる

色恋は来たらず
手持ちぶさたなので
いや
学校のようなものもないので
夜な夜な
空間を軸に腕をクロスさせてみる
あるいは
枕を軸に
腕をクロスさせて
頬をすりよせてみる


人々には
そこそこには愛されてきた
と思うが
色恋には愛されなかった
色恋は
常にはるか彼方にあって
近づけば遠ざかり
あさってを向いていると
不意に眼前に現れ
声を上げるまもなく通り過ぎた


色恋は
所持していない
所持の仕方を教えてくれる学校もない
そして
所持していないことでは
就職に影響が出ないが
憐れみの瞳は
痛く
嘲りの口元から流れる
風の音が
どうにも頭の中に響いて
響いて


色恋は来たらず
いつまでも来たらず
待ち人
こちらを待たず
失うものもないかわりに
与えられるものもなし


色恋は何処や?


自由詩 色恋は来たらず Copyright 北村 守通 2006-01-16 03:07:11
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