十一世紀のペルシャの学者オマル・ハイヤームが遺した「ルバイヤート」は、全篇四行詩です。「ルバイヤート」は、ペルシャ語で「四行詩集」を意味します。はじめエドワード・フィッツジェラルドの英訳本で世界的に知られました。若いころ耽溺した愛読書の一冊で、私がいま短詩を展開しているのは、このスタイルの影響もあるかと思います。
いずれの日にか 土に帰るわれら
せめてその日まで楽しもう いまひとときの人生
土は土に還り 土のもとに眠る
酒も詩も舞姫もなく そして終りもなく (井田俊隆 訳)
ああ、さかずきを満たせ。いくら嘆いても無駄なこと、
時はわたしたちのあしもとをすべるように流れる。
まだ生まれぬ明日や逝ってしまった昨日を
なぜ思い悩むのか、今日が楽しい今日であるなら。(森亮 訳)
岩波文庫版「ルバイヤート」はペルシャ語原典からの翻訳で、こちらも味わい深いです。
人生はその日その夜を嘆きのうちに
すごすような人にはもったいない。
君の器が砕けて土に散らぬまえに。
君は器の酒のめよ、琴のしらべに! (小川亮作 訳)
韻を踏んだ四行詩は古くからあるようで、わが国の詩人たちも試みています。但し、日本語は強弱アクセントが希薄なので、せいぜい同音異語を置くか、たんに行数をあわせただけものが多いようです。私もリズムを整調しようと、いろいろ工夫していますが、なかなか難しくて、アタマで考えただけではダメなんだなあ、というのが実感です。なんか、もっと皮膚感覚のようなものの獲得を夢みています。
それにしても、「そろもん」は、なぜ五行の詩なのでしょうか。どうして、心酔した「ルバイヤート」と同じ四行詩ではないのでしょうか。という前に、なんで俳句や短歌ではなかったのでしょうか。俳句や短歌も短詩であり、しかも定型なのだから、わざわざ五行の詩をかき起こす必要はなかったのではないでしょうか。
いや、べつに理由はありません。というか、この段階では、まだ謎です(笑)
●関連文書
「第一の栞」(
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=41486)