ノート(40Y.1・19)
木立 悟
消えかけるほど明るい朝に
冷たくもあたたかくもない雪の上を
裸足でふわふわ駆けていると
雪に埋もれたひろい庭が見えてきて
そこには椅子がひとつ置かれていた
あたりには人が歩いているのに
庭のなかには誰もいなかった
わたしはわたしの椅子だと思い
ふわふわと駆け寄ったが
やはりわたしの椅子ではないと感じ
立ちどまり 引き返した
庭から出て振り返るとあたりは暗くなり
椅子だけが白くぽつんと見えていた
明るい光に照らされているというより
暗い光に照らされずにいるようだった
わたしはふたたび駆け寄ったが
もう椅子には近づくことができず
消えかけるほど明るい椅子のまわりを
冷たくもあたたかくもない雪の上を
ふわふわと駆けまわることしかできなかった
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