フラグメンツ #51〜60
大覚アキラ
#51
花の降る午後に
はちみつタンジェリンのどあめ
口ン中で転がしながら
歩いていきたいよ
コロラド州デンバーまで
#52
魚肉ソーセージだと思って
買ってきたソーセージ
ビール飲みつつ
原材料の表示を眺めてたら
豚・牛・マトン・馬肉・兎肉
って書いてある
馬までは許す
騙されたと思って諦める
でも
兎は
兎は
兎は
#53
背中に翼の生えた肉屋が
今夜おまえたちの心を
鷲掴みにするだろう
#54
ポケットの中ゴソゴソやって
レシートの束
タバコの空き箱
百円玉3枚
十円玉1枚
一円玉4枚
それがおれの全財産
とりあえず
タバコを買うことにしよう
#55
こどものころ
そう
まだ幼稚園に
はいったばかりのことだ
「息をとめる」
ということが
よく理解できていなくて
おかーさん
ぼく
しんぞう
とめれるんだよ!
と言って
やってみせて(息をとめてみせた)
大笑いされた
くそっ
#56
いつもそうだよ
半分なんだ
放り投げて
拾い上げて
結局はまた
飽きちまうんだろ
おまえは
半分しか生きてない
#57
ももこもあいまいもこもあいもあいまいもこ
桃子も曖昧模糊モアイも曖昧模糊
あいもかわらずわらかずらかわからず
相も変わらず藁かズラか分からず
わたししわしわたわしわたしたわわしわたわたしたわ
ワタシ皺々タワシ渡したわワシ綿渡したわ
#58
しょせんラクガキ
ぜんぶラクガキ
だからこそ
ナイスなラクガキを
かかなきゃダメなんだ
#59
ちいさな子どもが
ちいさな掌で水を掬う
掌で形作った
やわらかな器の底のほうに
ほんの少しだけ残った
とうめいな水を
すっかり枯れてしまった
ベランダの秋桜の根元に
ぎこちなく注ぐ
秋桜よ
水はつめたいか
それとも
あたたかいか
#60
あたまがわすれてしまっても
からだはおぼえている
あたまがりかいできないことも
からだはわかっている
あたまがこばんでいても
からだはもとめている
あたまがたちどまっても
からだははしりつづけている
あたまがうそをついても
からだはほんとうのことしかいわない
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